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『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』ジャック・フィニイ ロバート・F・ヤング他 創元SF文庫

2019-01-17

☆☆☆☆

時間という、超えることができない絶対的な壁。これに挑むことを夢見てタイム・トラヴェルというアイデアが現われて、一世紀以上が過ぎた。この時間SFというジャンルは、ことのほかロマンスと相性がよく、傑作秀作が数多く生みだされている。本書には、このジャンルの定番作家といえるフィニイ、ヤングの心温まる恋の物語から、作品の仕掛け自体に技法を凝らしたナイト、グリーン・ジュニアの傑作まで、名手たちによる9編を厳選し収録した。本邦初訳作3編を含む。 内容紹介より



「チャリティのことづて」ウィリアム・M・リー
1700年に生きる十一歳の少女と1965年にいる十六歳の少年の心の交流を描いた作品。病気で高熱がでた後、時を隔てて同じ場所に暮らすふたりはテレパシーみたいなもので通じあえるようになりますが、未来の事柄を知った少女がそのことを他人に話したため、彼女は魔女疑惑をもたれ裁判にかけられることに。可愛らしい初恋のお話です。

「むかしをいまに」デーモン・ナイト
生が死で、死が生、とでもいうか時間の逆行あるいは退行している世界に生きる男の一人生を描いたユニークな物語。非常に深い切なさが余韻に残りました。

「台詞指導」ジャック・フィニイ
ある映画の撮影で大道具に使う予定の1926年代に運行されていたバスを撮影前夜に試運転することにした撮影スタッフたち。ニューヨーカーたちを驚かせようと、当時の運転手や車掌の制服や洋服を身に着けてバスを走らせるのですが……。いかにもフィニイらしいノスタルジックな舞台設定が活きている話。ただそれだけでなく、つかの間の過去を経験したため、自身の未来をかいま見てしまった新人女優の心情が切りとられているのはさすがです。

「かえりみれば」ウィルマー・H・シラス
「今自分がやっていることをわかった上で、過去に戻ってもう一度人生をやり直せたら、どんなに違うでしょう」(p102)、そう口にした女性は時間を十五年さかのぼって十五歳に戻ってしまいます。学校の授業も楽勝と思っていたところが、得意だった科目にも苦労し、苦手だった科目にはさらにひどい目に遭ってしまいます。つまりテスト用紙を目の前にして何もわからないというような悪夢を実体験するお話。

「時のいたみ」バート・K・ファイラー
三十六歳の男が十年後に過去に跳躍することを望んだ理由。彼の精神は「消去/復元絞り機」かけられているため、なぜ自分が鍛錬してたくましい体つきになり、不自由だった脚にも筋肉が付けて十年後の未来から戻ってきた理由がわかりません。本当に甘い話なのに、捻りを利かせた苦さが印象に残ります。

「時が新しかったころ」ロバート・F・ヤング
紀元2156年から白亜紀後期に時代錯誤遺物の調査にやってきた調査員はそこで幼い火星人姉弟に出会ってしまいます。彼らは火星の悪人によって身の代金目的に誘拐され、地球に連れて来られたという。恐竜が闊歩する古代地球を舞台にしたSF冒険小説。ヤングらしい優しいエンディング。

「時の娘」チャールズ・L・ハーネス
タイムパラドックスをネタにした、面倒くさくてこんがらがった男女の恋愛劇。

「出会いのとき巡りきて」C・L・ムーア
たった一人の人と巡り会うために壮大な時間旅行を行う男にまつわる究極の愛の物語がまるで神話のように思えてきます。

「インキーに詫びる」R・M・グリーン・ジュニア
少年、中年、老年、三つの時間を同時に描いて、かつて悲恋に終わったロマンスを成就させる。スケールは小さいが愛というテーマは同じ。

『時の娘』ジョセフィン・テイ ハヤカワ文庫HM




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テーマ : SF小説
ジャンル : 本・雑誌

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