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『時のかたみ』ジューン・トムスン 創元推理文庫

2019-01-20

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☆☆☆

祖父危篤の報を受け、クローディアはハウレット荘に駆けつけた。富裕なアストン家も、往時の勢いを失ってすでに久しい。衰微の空気に包まれ、見舞いは重苦しいものとなったが、祖父の幼なじみたるロローおじが闖入してきたとき、何かが変わった。老いてなお気概を失わぬこの天性のやんちゃ坊主は、手遅れになるまえに旧友と会い、過去の遺恨を水に流したいのだという……。同じ夜、ひとつ屋根の下で発生した二件の自然死。その不自然きわまりない状況に、フィンチ警部の推理の刃が向けられる。周到な謎解きが展開する、女流本格ミステリの粋! 内容紹介より



本書は1989年に発表された、フィンチ警部シリーズのなかの一作です。日本ではホームズ・パスティーシュもののほうが多く出版されている作家ですけれど、わたし個人はパスティーシュにはまったく興味が湧かないので、できれば本シリーズの他の作品も邦訳して頂きたいと思います。久坂恭氏が解説で触れているように、英国警察小説では、警部(視)と部長刑事などの部下とのコンビで捜査に当る体裁が伝統的にとられていることが多く、本書でも同様の設定です。英国の女流作家というと、どうしてもルース・レンデルと比べたくなりますが、物語は、『薔薇の殺意』のようにある人物の失踪から始まります。離れて暮らす弟が毎年欠かさず贈ってくれるバースデイカードが届かず、下宿先に問い合わせてみて長期間留守にしていることを知った老婦人は、不安になり警察に調査を依頼しようとしますが相手にされません。しかし、ふとしたきっかけで主人公の警部が親切心から調べてみることになります。彼はウェクスフォード主任警部と違い、独身の一人暮らしで、個人的なエピソードは一途に想いを寄せる女性に関してのことです。こわもてにもなりがちなウェスクフォードと異なり、ナイーブで思いやりがあり朴訥な雰囲気を漂わせて良い警官役を演じがちです。その行方不明事件とはまったく別に地方の名家において同日に二件の病死あり、その内の一件の状況に不審な点が見られるため、部下とともに主人公が捜査に赴きます。全体的にはレンデル作品を軽くしたみたいで、なにかもう少し調味料が欲しい感じがしました。良くも悪くも本格古典を現代にリメークしたみたいな雰囲気で安定感はありますが、設定も展開も代わり映えしないので、社会問題などの現代的な要素を取り入れたいところです。女性作家特有の繊細な心理描写があまり感じられないし、サスペンス部分を担当するはずの孫娘の役割が後半効いていない気がしました。

『追憶のローズマリー』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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