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『贋作』ドミニク・スミス 東京創元社

2019-10-25

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☆☆☆☆

画商に修復の腕を見込まれ、ある富豪の弁護士が所有する17世紀オランダ女流画家の作品の贋作をひそかに制作し、心ならずも絵画窃盗に加担してしまった女子画学生。私立探偵を雇って彼女の存在を探り出したその弁護士は、罪を暴き、大切な絵を取り戻そうと、彼女に近づくが、彼女の絵に対するひたむきさと知識の深さに敬意を抱くようになる。そして彼女は絵を愛する、自分とは別世界に住む大人の男に惹かれ始めたが……。40年以上の時が流れ、過去を封印し罪の意識におののきながら、美術史学者として活躍する彼女の前に、自分の手になる贋作と真作がそろって出現した!いったいなぜ?17世紀の女流画家と現代の女性学者、それぞれの愛と喪失と苦悩が時代を超えて呼応する。絵画贋造の技法、複雑に絡み合う人間関係も、ミステリアスで美しい光のなかに見事に描きあげられた情感溢れる物語。 内容紹介より



物語は、17世紀のオランダ、1957年のニューヨーク、2000年のシドニー、この三つの時代と場所によって各章に分けられ、主要な登場人物は女流画家サラ、富豪の(元)弁護士マーティ、(元)画学生エリーです。女流画家に降りかかった悲劇と制作した絵画にまつわる出来事、彼女の遺した絵画をめぐって起きた盗難事件、その盗難事件に利用された贋作と盗まれた真作が美術館に持ち込まれたことで明らかになる過去が語られていきます。サラが絵画を描いた動機は、ひとり娘を喪った悲しみから、エリーは女性差別を体験したことからくる怒りで贋作を描いているように、彼女たちの人生を重ねあわせ、また対比させています。注目したいのはマーティの存在ですが、先祖の財産で裕福に暮らし、サザビーズに出入りする彼は、エリーとはまったく異なる世界に住む人物に設定され、借金や貧困に苦しんだサラと生活のために絵画補修をしつつ、論文を書いている苦学生エリーとは対照的な存在であり、彼の存在はほとんど添え物に過ぎません。彼の立ち位置は、エリーのオークション自体への揶揄に表されているように、そしてサラのパトロン的存在の大金持ちの老人に代表されるように、貧しさの中からうまれた絵画が金持ちの所有になる現実を皮肉ってもいます。サラの人生の一部を切りとったことにより物語に奥行きと情感を出し、時代を超えた二人の女性の数奇な結びつきを巧みに描き上げた作品だと思います。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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