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『エンジェル・シティ・ブルース』ポーラ・L・ウッズ ハヤカワ文庫HM
2019-11-18
- Category : ☆☆☆
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黒人の白人警官に対する憎悪が頂点に達し、暴動が発生—ロス市警の女性刑事ジャスティスは鎮圧に乗り出すが、暴動の最中、殺人事件が起きてしまう。しかも、被害者は、十数年前に彼女の夫と娘を射殺した黒人解放運動の元幹部だった。千々に乱れる思いの中、ジャスティスは事件の真相を追うが……。汚れた街を吹き抜ける荒荒しくも美しい一陣の風。深き心の傷に負けないニュー・ヒロインが活躍するマカヴィティ賞受賞作 内容紹介より
主人公は、ロサンジェルス市警強盗殺人課の女性刑事です。市民暴動への警備のために黒人居住地区に駆り出された彼女は、十三年前に彼女の夫と娘を殺して逃亡中だった男が、暴動現場近くで殺害されて発見されたという知らせを受けます。事件の関係者であるために、直接には捜査に関われない彼女は、管轄する別の署の刑事に協力する形で捜査に携わることになります。一応作品としては警察小説なのですけれども、コージーミステリっぽいものも感じました。特に、見当違いな人物に容疑をかけ、実はまったく話題にも上らず、それらしい伏線もなかった人物がクライマックスで急に姿を現す、という拙い展開や高校時代の憧れの男性がさらにパワーアップして再会するロマンスとか。こういうミステリとしてはかなり今ひとつなのに、なぜ本書がマカヴィティ賞(2000年)を受賞したのかというと、女性であり黒人であり、かつ警察官である主人公の社会的、人種的立場からくる差別、偏見、ハラスメントの問題を前面に打ち出して再確認しているところではないでしょうか。今からほぼ二十年前に、非白人の女性警察官が主人公になったミステリ作品は結構珍しいのではないかと思います。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
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