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『策謀と欲望』P・D・ジェイムズ ハヤカワ・ミステリ

2020-06-06

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☆☆☆☆

少女は必死に走った。最終バスに乗り遅れると、門限に間に合わない。だが、バスは無情にも目の前を走り去っていく。翌朝、少女は死体となって発見された。ノーフォークの連続絞殺魔カッコの四番目の犠牲者だった……。ダルグリッシュ警視長は、亡くなった叔母の遺産を整理するため、休暇をとってノーフォークの海沿いの寒村を訪れた。青い海を背景に、午後の光を受けて金色に輝く松林や修道院廃墟。そしてその向こうには、ラークソーケン原子力発電所の巨大な灰色の建物が、岬を睥睨するように聳え立っている。この平和な光景に、カッコの影などどこにも感じられない。だが、それはたんなる幻想にすぎず、死の脅威がこの岬にも襲いかかろうとしていることを、ダルグリッシュは知る由もなかった。現代本格ミステリの頂点に立つ著者が人間の心に巣くう策謀と欲望を重厚な筆致で描きあげた話題に本格巨編。 内容紹介より



以下、少々ネタバレ気味です。ご注意ください!


ダルグリッシュが叔母の遺した家を訪れた土地ノーフォークでは、折しも絞殺魔が犯行を重ね、地元にある原子力発電所の女性職員もその犠牲者の一人だった。さらにもう一人、発電所の管理部長代理の女性も絞殺魔の犯行である痕跡を残した姿で発見されるが……。
最後の犠牲者にかかわる重要な容疑者たちは、絞殺魔が被害者に残した、警察が外部に伏せている犯行のサインを聞き知っている五人に絞られます。そこでその容疑者たちそれぞれに視点を移して、当然彼らの被害者との関係や個人的な感情をあぶり出していく流れになるのですが、ここに原子力発電所という特異な大道具を据えて、その発電所に反対する人物を登場させるという巧妙なプロットを仕立てています。さらに重要な容疑者たちとは別に、犯行時のアリバイについて口裏合わせを行った人物が相手に抱いた猜疑心からとった行動により、事態があらぬ方向へと動いてしまう経緯(非常にシニカルでブラックなユーモアを帯びた)を添えて、もう一つのストーリーを作り上げていく巧みさあり、まさに細部まで計算が行き届いた印象を受けました。とにかく縦横に緻密に組み立てられた人物の構図と心理の描写力が際立った堅牢なミステリだと思います。 




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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