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「ダブル/ダブル」マイケル・リチャードソン 編 白水社

2007-01-28

☆☆☆☆

このアンソロジーはとても明快な方針のもとに作られています。すなわちーー原則として二十世紀に書かれた西洋の小説の中から、〈双子〉〈分身〉〈鏡〉〈影〉〈人造人間〉といった、いわば「一人が二人で二人が一人」の物語を集めて面白い本を作る。これがリチャードソン氏の狙いでした。訳者まえがきより



扶桑社ミステリーに『EQMM90年代ベスト・ミステリ 双生児』というアンソロジー
ありましたけれど、本書はジャンル的にかなり広範囲なアンソロジーです。作家たちも豪華ですし費用対効果(いやらしい銭の話ですが)の面でもかなりお買得な一冊。

「かれとかれ」ジョージ・D・ペインター

「影」ハンス・クリスチャン・アンデルセン
学者の影がある出来事で主から離れてしまい、特異な経験をした後に、その影が人間の形をして主のもとへ訪ねてくる。やがて、学者と影の主従関係が逆転してしまうような出来事が起こり…。
この作品は、「真と美と善」について探究する哲学者と世俗的、俗物的な影との対比の物語という捉え方で良いのでしょうか?寓意性の強い皮肉な結末。

「分身」ルース・レンデル
ドッペルゲンガーの伝説と男の優柔不断さが招いた悲劇を描いた作品。「まったく男って奴は…」というレンデルのつぶやきが聴こえてきそうです。

「ゴーゴリの妻」トンマーゾ・ランドルフィ
ゴーゴリの妻は実はゴムの人形だった。その顛末のお話。

「陳情書」ジョン・バース

「あんたはあたしじゃない」ポール・ボウルズ
かなり強烈な衝撃を受ける話。さすがボウルズ。無気味な精神世界の話。

「被告側の言い分」グレアム・グリーン
グリーンのオーラが作品全体を覆っていますが、双子の兄弟のどちらが犯人でどちらが生き残ったのか?読者に謎を問いかけたまま終わる。

「ダミー」スーザン・ソンタグ
自分そっくりのダミーを作り出した男の話。現代社会のアイデンティティーの問題を取り上げているのだろうか。

「華麗優美な船」ブライアン・W・オールディス
劇中劇のように語られるノアの方舟が荒れ狂う海で遭遇したもう一隻の方舟の話、その船には一角獣やケンタウルスやティラノサウルスなどの恐竜たちが積まれていた。なんていう10ページほどの小品ながら、ものすごく読む者にイマジネーションを与えます。さすがオールディスですね。

「二重生活」アルベルト・モラヴィア
一人の若者がもう一つの部屋を借りて二重生活をはじめようとする話。
家を見にいった彼は、そこに今借りているのと同じような部屋、同じような家主とその娘がいるのを発見する。ミニマムなパラレルワールドを想わせる作品。

「双子」エリック・マコーマック

「あっちの方ではーアリーナ・レイエスの日記」フリオ・コルタサル
わたしの苦手な作品。訳が分からない。

「二人で一人」アルジャーノン・ブラックウッド
ブラックウッドにしては牧歌的雰囲気か…、恐くない。

「パウリーナの思い出に」アドルフォ・ビオイ=カサーレス
幻想的な悲恋小説。



ダブル/ダブル ダブル/ダブル
マイケル リチャードソン、 他 (1990/02)
白水社

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

てん一さんのコメント

えー、コルタサルって評価が高いのですか!個人的には、なんだか南米系に甘い傾向があるように思いますが…。しかし、自分の読解力、想像力の乏しさを実感したりもします。
このなかでは、オールディス の作品のイメージが突き抜けた感じで好きです。

kazuouさんのコメント

これはありそうでなかった「分身」テーマのアンソロジーですね。テーマがテーマだけに、わかりにくい作品が集まりそうなものですが、これはうまく多ジャンルからセレクションしていて、なかなかの本だと思います。
いちばんよかったのは「パウリーナの思い出に」。今度国書刊行会から、これを表題作にしたビオイ=カサーレス の短編集が出るそうなので、非常に楽しみにしています。
いちばんつまらなかったのは、やっぱり
「あっちの方ではーアリーナ・レイエスの日記」でしょうか。コルタサルの作品って、なんかどれもわかりにくいんですよね。でもコルタサルって、識者の間では評価が高いようなのが不思議です。

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