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「眠れぬ夜の愉しみ アメリカ探偵作家クラブ傑作選(3)」ハロルド・Q・マスア編 ハヤカワ・ミステリ文庫

2007-04-15

☆☆☆

典型的な中産階級のジョンは、細君の悪徳のほとんどにがまんを重ねた。電気カミソリですね毛をそっても、彼の金を使い果たしても、彼女の振舞いが退屈きわまわりないものであっても、耐え忍んだ。ただひとつがまんならなかったのは、細君が豚さながらに肥満している事だった。そこへ、細身で美しいフランシスが現われたのだ。彼女と一緒になるには、なんとか細君を殺さなければならない……。皮肉で残酷な結末を迎える「ジョンとメアリー」を始め、重度の不眠症患者を自認する編者が、読者諸賢の眠れぬ夜のために選んだ、とびきり面白い15の短編。 内容紹介より



「ジョンとメアリー」ロバート・ブロック、「子供ごころ」ドロシイ・S・デイヴィス、
「運命の日」スタンリイ・エリン、「複式簿記」ロバート・L・フィッシュ、「オーデンダール」ジョー・ゴアズ、「ウォッチバードが見ている」アレン・キム・ラング、「シリーナ、ホワイト・ハウスで窃盗」パトリシア・マガー、「逃げた女」ロス・マクドナルド、「ウィリーおじさん」ウイリアム・P・マッギヴァーン、「黒い殺意」ウィリアム・F・ノーラン、「アヒルのかわりに」チャールズ・ノーマン、「物より心」エラリー・クイーン、「用心深い男」ローレンス・トリート、「女心」ヒラリイ・ウォー、「地獄へ堕ちろ」ドナルド・A・ウォルハイム

どうも、古本みしゅらんです。“とびきり面白い”は少し言い過ぎかもしれませんよ。
なかでも面白かった作品を挙げます。

「運命の日」
“私”が三十五年前に遭遇した友の運命の日の話。ある日、朝食の席で見た新聞にはやくざのボスが殺された記事が載っていた。車の中で射殺された死体とゴルフバッグの写真。被害者は“私”の子供時代の親友だった。“私”の記憶は三十五年前にさかのぼり、親友の人生を変えることになったゴルフ場でのやくざの暴力事件に思い及ぶ。
ちょっと強引な展開のような気もしますが、少年の心の劇的変化が象徴的に描かれていると思います。

「オーデンダール」
この手の短編集には珍しいアフリカが舞台の文芸色の強いサスペンス(?)。ゴアズらしい硬派な作品ですねえ、ハードボイルドしてます。ポール・ボウルズとヘミングウェイを足して二で割ったみたいな感じを受けました。ゴアズといえばサンフランシスコとかいかにもアメリカ的な場所を舞台にしそうなイメージだったので意外でした。

「シリーナ、ホワイト・ハウスで窃盗」
パット・マガーがこんなシリーズ・キャラクターを持っていたなんて!全然知らなかった。某国からアメリカ大統領夫人に贈られたオルゴールが殺人用の凶器に掏り替えられているらしいのだが、その確証が得られない。そこでシリーナ(素人女性探偵みたいなひと)の出番となる。ほかの作品も読んでみたいです。

「逃げた女」
「金曜の夜のことだった。ライト・ブルーのコンヴァーティブル、気分はダーク・ブルーで、メキシコ国境から帰途についていた」なんだかアイリッシュの作品を思わせる冒頭部分で一挙に昔懐かしいプライベート・ディテクティブ、プライベート・アイの世界に引き込まれます。キャディラック、ピアノマンのいるクラブ、支配人とギャング、オートマティック拳銃、歌手・悪女、後頭部への一撃、探偵小説においてお約束のエレメント一杯、ラストの余韻も素晴らしいぞ、ロス・マク。リュウ・アーチャーもの。


眠れぬ夜の愉しみ 眠れぬ夜の愉しみ
(1982/07)
早川書房

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テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

てん一さんのコメント

kazuouさん、いつも耳よりな情報をありがとうございます。『スペシャリストと犯罪』は読んだことがあります。イギリス・ミステリ傑作選と比べて読んでみるのも興味深いですね。アメリカのからっとした感じとイギリスの粘着質な感じの微妙な違いが面白いです。

kazuouさんのコメント

このシリーズはいいですね

アメリカ探偵作家クラブ傑作選のシリーズは何冊も出ていますが、どれもレベルが高くて面白いですね。とくに ロバート・L・フィッシュ編『あの手この手の犯罪』とか、ローレンス・トリート編『スペシャリストと犯罪』なんかは、すごく面白かった覚えがあります。
パット・マガーのシリーズは、翻訳によっては「セリーナ」になっているものもあるようですが、この作家の持ち味が出ているシリーズではありますね。たしか扶桑社ミステリーから出ている『ウーマン・オブ・ミステリー』の1巻か2巻に、同じシリーズ作品が載っていたような気がします。

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