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「雪の中の三人男」エーリヒ・ケストナー創元推理文庫

2007-04-22

☆☆☆☆

百万長者の枢密顧問官トーブラー氏は、貧乏人に変装しておしのびでの旅行を始めることになった。グランドホテルではこのことを知ってかたずを呑んで待期していたが、とんでもない誤解からドンチャン騒ぎの大連続となった。貧乏人に変装した百万長者と百万長者に間違われた失業青年をめぐって、ホテルの従業員とお客の織りなす人生模様。ケストナーの魔法の鏡に映った、赤ん坊のような雪の中の三人男を描く快心の風刺ユーモア編。内容紹介より



ドイツ・オーストリア国境を挿んで一方ではお金持ち、片方では一文無しになってしまう青年や召し使いに変装してアメリカ人の旅行者一家を接待する伯爵家族が登場する『一杯の珈琲から』、双子が入れ替わる『ふたりのロッテ』、そしてこの作品と、ケストナーはこういうシチュエーションがお気に入りなのでしょうね。わたしも好きです。謎のお金持ちはマッサージやシャム猫が好きという情報を知ったホテル側が用意したそれらのものに、失業青年が困惑する様子が笑えました。また、下男ヨーハンはご主人に対して少々ウェットな態度ながら、メルローズ・プラントのリヴァンやピーター・ウィムジイ卿のバンター並の立派な執事ぶりも面白いです。

などと、現代ではあまり見かけない良質で上品なユーモア小説だと思います。しかし、ケストナーは執筆当時、ナチス・ドイツから厳しい弾圧を受けていたそうです。この後に書かれた『一杯の珈琲から』もユーモア小説ながら為替管理の制約のため主人公が置かれた状況に、カフカ的不条理の世界をかすかに感じるのはかなり深読み過ぎか。

雪の中の三人男 雪の中の三人男
エーリヒ・ケストナー (2000)
東京創元社

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

てん一さんのコメント

『消え失せた密画』は未読なんですが、この三部作は現代の作品にはない面白さがあると思います。小松太郎氏が訳者あとがきで「ケストナーともあろう者がどうしてこんな実のない、泡のような娯楽小説を書いたのだろう」と述べていますが、そこまで言わなくてもという感じがしました。

kazuouさんのコメント

いい作品ですね

これ、創元で三部作として出てましたっけ。
『消え失せた密画』『雪の中の三人男』『一杯の珈琲から』、どれも好きな作品ですが、『雪の中の三人男』は中でもいちばん面白く読みました。
役柄の入れ替わりとすれちがい、というのは、やっぱりケストナーもお気に入りだったんでしょうね。今読んでも十分に面白い、上質な作品だと思います。

あと、三部作のなかでも『一杯の珈琲から』は、他の二作とちょっと違う雰囲気がありますね。ちょっとシリアスな要素が強いというか、てん一さんの書かれているように「カフカ的不条理」が感じられる作品ではありました。

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