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「ブルー・ドレスの女」ウォルター・モズリイ ハヤカワ文庫

2007-10-23

☆☆☆☆

1948年、ロサンゼルス。失業中の黒人労働者イージーは、家のローンを返済するため、美貌の白人女性ダフネを捜しだす仕事を引き受けた。調査を始めたイージーは、ダフネが出入りしていたもぐり酒場を訪れ、彼女の知人の黒人女性を見つけ出した。が、数日後、その女性が殺され、事件は思わぬ方向へ―アメリカ私立探偵作家クラブ賞、英国推理作家協会賞新人賞を受賞し、ミステリ界に旋風を巻き起こした衝撃のデビュー作!内容紹介より



殺人事件の容疑者として不当逮捕され過酷な取り調べを受けた後、ようやく解放された主人公イージーは、酒場へ向かう途中、自分にこう言い聞かせる、「ほんとうは走りたかった。(中略)急ぐんじゃないぞ、と絶えず自分に言い聞かせねばならなかった。夜遅く黒人がむやみに駆けていて、パトロールカーに出くわそうものなら、たちまち逮捕されるのがわかっていたからだ」。白人から黒人への明文化されない暗黙の規制や決めごとを差別される側は絶えず気にしていなければならないなんて…。なんというか、デモクラシーの内にある全体主義みたいなものを感じて息苦しくなりました。

上記のような関係のほかにも、明と暗の対比が描かれています。戦場で戦った経験があり、からんできた白人のグループを殺せるほどの体力と技術を持ちながら、それを使わない暴力嫌いの面があるイージー。彼は身体はタフだが性格は小市民的で堅実、精神面に未熟さを感じさせるところもある。一方、彼の旧友のマウスは、金のためなら平気で人を殺せる。イージーがアマチュアならマウスはプロフェッショナルです。主人公の職業を私立探偵ではなくて機械工にしたのも作者のそういう意図があったからかもしれません。

以下、少しネタばれ気味なので続きに書きます。

また、主人公が探す“ブルー・ドレスの女”ダフネは多重人格を思わせ(眼の色の変化でそれを暗示させる)、肉体と心のダブル・バインドによって苦しんでいる。

独身のイージーが一軒家に住んで住宅ローンの支払いに窮するところや二度も頭を殴られて気絶したり、理髪店の前に立つ物乞いなど、物語全体の雰囲気を暗くしないようなユーモラスな場面もあります。後、主人公が冗舌でないのも良いです。登場人物が錯綜している印象を受けるのはハードボイルドにありがちかも。


ブルー・ドレスの女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ブルー・ドレスの女 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(1995/12)
ウォルター モズリイ

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テーマ : 海外ミステリ
ジャンル : 本・雑誌

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