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「ゲスリン最後の事件」フィリップ・マクドナルド 創元推理文庫

2008-02-10

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☆☆☆☆

イギリスからアメリカへと向かう旅客機が落下し、墜落直前に機外へほうり出された作家のエイドリアン・メッセンジャーは謎の言葉を遺して絶命する。ロンドンを発つ前に、彼はスコットランド・ヤードの友人に、一枚のリストを手渡していた。それには、十人の氏名と住所が記されており、現在の消息が知りたいというのだった。調査の結果、判明する限りの人間はみな、事故に遭って死亡しており、しかも、その十名の人物には相互に何らつながりを見出せなかった! 完全犯罪を狙う冷静沈着な犯人の異常な執念。それに対峙する名探偵アントニイ・ゲスリン。P・マクドナルドの本領が遺憾なく発揮された後期代表作の本邦初紹介! 内容紹介より



原作が発表されたのは1959年ですから、五十年近く前です。しかし、時間による劣化をほとんど感じさせません。現代のサスペンス・スリラー小説の要素がほとんど入っているし、その源流に位置する作品の一つではないかと思います。最近のその分野の作品と比べるとスローテンポですが、時刻を書き入れ行動とシンクロさせてスピード感を出そうと作者なりの工夫がみられます。

正体不明の人物「スミス・ブラウン・ジョーンズ」を獲物とし、それを狩る探偵ゲスリンと警察のストーリーはフォーサイスの『ジャッカルの日』を思わせました。

とにかく、飛行機事故で亡くなった男が遺したリストに載っていた十人の男たちが、すべて五年の間に事故死していた、この導入部には素晴らしく読む気をそそられました。P・マクドナルドの作品について、瀬戸川猛資さんが解説の中で都筑道夫さんの文章(『黄色い部屋はいかに改装されたか?』より)を引用されているのを孫引きさせてもらうと〈フィリップ・マクドナルドの長編は、狙いは派手なのに、展開の仕方が地味なせいか、「やすり」と「消えた看護婦」ぐらいしか訳されていませんが、モダーン・ディテクティヴ・ストーリーを考える上で、欠かせない作家でしょう。つねに解決にいたる論理を、第一に重んじているからです〉。同意。

墜落現場である洋上での救出劇の場面や、「長い年月をかけて、多数の人物を事故死に見せかけて殺害してきた犯人像」など適度に突飛な設定が、良い意味でいかにも“物語”を読んでいる感じがして楽しめました。

瀬戸川さんがいう「これは本格ミステリの秀作ではなくて、本格ミステリのパロディの秀作でしょう?」(P360)には、ちょっと引っかかります。間違いなく本格ミステリではないけれど、そのパロディでもなく、ハリウッドのフィルターを通した英国冒険小説ではないでしょうか?

本書は1997年に『エイドリアン・メッセンジャーのリスト』に改題。



エイドリアン・メッセンジャーのリスト (創元推理文庫)エイドリアン・メッセンジャーのリスト (創元推理文庫)
(1997/11)
フィリップ・マクドナルド真野 明裕

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