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「宇宙戦争」H・G・ウエルズ ハヤカワ文庫SF

2008-02-15

Tag : SF

☆☆☆☆☆

天空に赤く輝く神秘の星、火星。その表面で、ある夜、無数の爆発が観測された。それから6年後、イギリス各地に、夜空を切り裂いて緑色に輝く流星郡が降りそそいだ。当初、隕石と思われた謎の物体のなかから、やがて驚くべき姿の生物と巨大なマシーンが出現!人々を焼きつくし、次々に村や街を破壊してゆく。その圧倒的な力の前に、人類はなすすべもなかった……SF史上に燦然と輝く不朽の名作、待望の新訳決定版登場!内容紹介より



このエポック・メーキングな傑作を古くさいと言う人がいますが、まったく罰当たりな言い草です。そんな人はきっといつの日か火星人に血を吸われることでしょう。じょ、冗談です。古くさいというより却って新しいと感じる気持ちが以前読んだときより強くなったように思います。ようやく時代がウエルズに徐々に追い付きつつあるのではないでしょうか。

この物語が書かれて百十年、異星人と人類との遭遇、出会いというシチュエーションや道具立てのなか、その後のSF(小説、映画)で、この作品から一歩でも新しいアイデアなり主張が生まれたか?たかだか『E.T.』にすぎない(ウエルズ繋がりでハリー・ライム風)。そのスピルバーグでさえ9.11に影響されて、テロの恐怖をテーマの一つにし、「エイリアンが敵であるという本物のSF映画」*『宇宙戦争』を撮ってしまうはめに…。

藤原帰一氏の『デモクラシーの帝国』(岩波新書)で、エイリアンを絶対悪に仕立てた映画『インディペンデンス・デイ』とウエルズの『宇宙戦争』を比べて評した箇所、「『宇宙戦争』は植民地支配の寓話でもあった。宇宙人に襲われる地球という物語のなかには、非西欧世界にとって大英帝国とはこの宇宙人のような存在ではないかという、皮肉で知的な問いが隠されていた。世界を「われわれ」と「やつら」に区別するどころか、そんな区別には意味があるのか、とウェルズは疑っていたのである。そんな疑い、また「やつら」の側からは世界がどう見えるだろうか」(P63~P64参照)があって、
本書がハリウッド映画の人類讃歌一辺倒、人間の驕りと一線を画し、長く読み継がれるのはこのスタンスがあるからでしょう。

そこも決して大上段に構えて主張するのでなく、主人公が逃亡中に宇宙人の残虐行為を見て、人間に殺される蟻であったりネズミであったり、あるいはウサギの身になって思い、人間本位の考え方に疑問を呈しているところにイギリス人らしいシニカルなユーモアを感じました。


*スティーヴン・スピルバーグのインタビューより抜粋
http://cinematoday.jp/page/A0000801



宇宙戦争 (ハヤカワ文庫SF)宇宙戦争 (ハヤカワ文庫SF)
(2005/04)
H.G. ウエルズ

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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