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「死者の靴」H・C・ベイリー 創元推理文庫

2008-04-29

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☆☆☆

風光明媚な田舎町キャルベイの海から、少年の死体があがった。少年は、州警察のユーヴデイル警部と密会しているのを目撃された後、行方がわからなくなっていたのだ。容疑者から依頼を受けた弁護士クランクは、百戦錬磨の曲者ぶりを発揮して、事件に当たる。『フォーチュン氏の事件簿』で知られるベイリーの、もうひとりの探偵役ジョシュア・クランク本邦初紹介。必読の傑作長編。内容紹介より



H・C・ベイリーは英国ミステリ黄金期の人気作家のひとりだったそうです。本書は1942年に出版されいて、同年にはフェラーズの『猿来たりなば』が出ています。『猿…』の解説を書かれている森英俊氏によるとトビー・ダイク・シリーズは「黄金時代のパズラーへのオマージュ、パスティーシュとしての側面がある」(p302より引用)とのことです。

したがってベイリーのこの作品も黄金期末期あるいはその終焉という時代的影響を受けているのではと思うのです。たとえば、それまでの英国本格ミステリのパターンは、お屋敷で事件が発生し、探偵役が乗り込んで屋敷の住人たちと使用人、外部の関係者(医者や弁護士)から聞き込みを行って事件を解決する流れが一般的でした。狭い空間(ほとんど家一軒分)と限られた人間関係。ところが本書はそのイメージからかなり離れています。殺されたのは下層階級の少年であって舞台は町全体に移っています。探偵役の行動範囲も当然広がってくるわけで、本書では調査の大部分は助手ポプリーが行っています。これはレックス・スタウトがネロ・ウルフ・シリーズで助手アーチーが調査役を担っていることと似ています。そして、解決まで一年以上の歳月を要しています。

以下、少々ネタばれ気味です。ご注意下さい。





さらに、これは想像が飛躍し過ぎていると思いますが、
舞台となっている町における貧富の差などの社会問題、行政の腐敗、市警察と州警察の確執といった事例とその渦中に入り込んだ探偵役(本書ではその助手)からハメットの『血の収穫』を思い起こしました。なんとなくハードボイルド風雰囲気を感じました。ネットで調べていたら、ブログ『押入れで独り言』さんの記事がベイリーとハードボイルドについて言及されていますのでご覧下さい。

死者の靴 (創元推理文庫)死者の靴 (創元推理文庫)
(2000/08)
H.C. ベイリー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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