イギリス貴族のジュリアン・ケストレルは、イタリア滞在中に親しくしてもらった侯爵の死をパリで知り、ミラノに赴く。愛憎うごめくマルヴェッツィ家で犯人を捜そうとするジュリアンの前に思わぬ結末が……。人気作家ロスの遺作にして、アガサ賞最優秀賞受賞作。華麗なる北イタリアが舞台のミステリー巨編! 下巻内容紹介より
ある事情により殺人事件であることを伏せられていた出来事が四年後に明らかになり、ケストレルの調査が始まるという設定が非常に巧妙。第1部を長いプロローグの形にして
国際、国内情勢、マルヴェッツィ家とその周囲の人間関係、謎の歌手など、読者に煩雑にならないよう分かりやすく説明しています。誰が真犯人なのか?それと歌手の正体は?ふたつの謎を提示して最後まで引っ張る手法が見事です。
ケストレルがすでに人格が完成した主人公として描かれていないのもこのシリーズの魅力であって、一種の成長小説ともとれます。
一作ごとに小出しにされる両親や生い立ちの話、徐々に明らかにされるケストレルの過去とそれに伴う負の部分。外面を飾るスーパーヒーロー的才能にかかわらず内包する心の中の脆さを描くことで彼を人間らしく見せて読者は魅了されるのでしょう。これから彼がどう成長し変わって行くのか、とても興味深いのに作者の死によってその後を読むことができないとは本当に残念な限りです。
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