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「殿下と七つの死体」ピーター・ラヴゼイ ハヤカワ文庫

2005-10-07

歴史上実在した人物を主人公にしたミステリ“殿下シリーズ”の第二作目。
水戸黄門や暴れん坊将軍みたいなもんですよね。

ヴィクトリア女王の長男、皇太子アルバート・エドワード(バーディ殿下)はイングランド中部バッキンガムシャーの貴族の大邸宅に狩猟パーティーのため滞在していた。
月曜日、晩さんの途中で突然倒れた招待客の女優が病院で死亡したとの知らせが入る。
火曜日、その女優のパトロンだった公爵が自殺する。
水曜日についに殺人が起きる。

王室や上流階級のスキャンダルになってしまうので警察に通報するわけにもいかず、
また、自分を名探偵だと思い込んでいるバーディ殿下は事件を解決したくて仕方がない。
でも、ますます死体は増えていく。本格派ユーモアミステリ。

シリーズ第一作目の『殿下と騎手』より面白かったです。
クリスティ生誕百周年を意識して書かれたらしく、クリスティのある作品を思い起こさせるような設定になっています。
警察が捜査すれば簡単に解決できそうな事件なのに、ラヴゼイが上手なのは時代設定をヴィクトリア朝にもって来て、やんごとない身分の方々を登場させ警察に介入させない状況を作ったところでしょう。クリスティの作品のように派手で劇的状況ではないけど、こんなふうにも書けるんだよというラヴゼイなりの彼女へのオマージュなのかな(少し、対抗心ありの)。

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「殿下と七つの死体」の感想

 私は面白く読んだので、感想を書かせていただきます。
 まず、この小説の趣旨はトリックや犯人の意外性などではなく、狭く考えると権力者の、広く考えると人間一般の、気軽に行っているが実は残酷な、または身勝手な行為を笑い話で非難することだと思います。
 この小説の事件の原因となったのは、前年の狩猟パーティーの参加者たちが少年の命や誤射のつぐないよりも自分たちの娯楽を優先し、誤射をもみ消したことです。事件を解決しようとするのが主人公のバーティですが、彼は権力を持つだけで、特に能力はない身勝手で独りよがりな人物です。権力を社会のために使うわけでもなく、自分の楽しみのために行動し、自分の行為を正当化しようとします。事件の原因と同様に他者の命を尊重しないこと、娯楽優先、事件のもみ消しとして、次のことが書かれています。バーティは事件の原因には関わっていませんが、次のことには関わっています。
・狩猟パーティーでは非常に多くの動物が娯楽のために殺される(ミス・ダンダスの指摘)
・バーティは事件を警察に知らせず、自分で犯人を捜そうとして、周囲の人々の命を危険にさらす(アリックスの指摘)
つまり、この小説の非難、嘲笑の対象は第一にバーティであり、第二として他の登場人物の身勝手なところを描いていると思います。そのため、自業自得のようなことがいくつか書かれています。例えば、動物を狩る側だったバーティが、小説の最後のところで、狩りだされる動物のような立場になっているのは面白いと思いました。そのようなバーティの回顧の形で事件が語られますから、自虐的な笑い話になっています。
 実在した皇太子アルバートエドワードがこの小説のバーティのようだったわけではないでしょうから、この小説が「バーティ」として非難しているのは、強い立場にあって身勝手な行為で弱者の命や生活などを脅かす人々ということになると思います。さらに、バーティや他の登場人物の行動、心理は現代の日常でもありそうな内容ですから、一般の人々、読者自身や読者の住む社会の黒い部分を笑い話で書いているとも思います。

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