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『曲芸師ハリドン』ヤコブ・ヴェゲリウス あすなろ書房

2009-12-29

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☆☆☆☆

ハリドンが安心できるのは、曲芸をしているときと“船長”と二人でいるときだけだった。しかし、その“船長”が…。
冷たい空気が、秋と港のにおいを運んでくる。
「他人を信用しないこと」を信条に生きてきた少年は、たったひとりの友をさがしに、夜の街へととびだした。
北の港町を舞台にくりひろげられるだれも知らない奇妙な一夜。
人を信じることを知らない少年、曲芸師ハリドンの物語。
スウェーデンからやってきた現代のおとぎばなし。



同居している〈船長〉が遅くなっても帰って来ないものだから、不安になった主人公が彼の姿を求めて夜の街を駆け巡る。その途中で、ジャズバーの女主人、小犬、ギャンブル狂、野犬捕獲人、威張った警官といった人たちと出会い、事件に巻き込まれたりするというシンプルな話。

訳者の菱木晃子さんは、主人公が自分のことを言う時に「おれ」と訳出されていて、訳者あとがきでも「少年ハリドン」と書かれているので、この主人公が男の子であることはほぼ間違いないのでしょうが、作者は主人公のことを終始一貫して「ハリドンはなになにをした」という書き方しかしていません。「彼は」とか「この男の子は」という表現*を一切していないのです。本書は児童文学ですから、読者のことを考えて男女両方にもとれる描き方をしたのだろうかと想像すると同時に、この捜索劇が友情あるいは父親のような存在である〈船長〉への思慕の表出であるように、恋愛感情の表れでもあるのじゃないかと勘ぐってしまうのですね。軽いストーキングじみた主人公の行動を読んだら、そんな深読みをしてしまいました。

それと主人公と話ができる犬の存在は、だまされたり、からかわれたり、追いはらわれたり、容姿のことでひどいことを言われたりした体験から、〈船長〉以外の他人に心を開かないハリドンの失っていた前向きな何かが具現化したものではないのでしょうか?たとえば「希望」もそのなかのひとつなのかも。

*犬がハリドンを「自転車小僧」と言い表す箇所はありますが、これも訳出の問題なのではと。




曲芸師ハリドン曲芸師ハリドン
(2007/08)
ヤコブ ヴェゲリウス

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テーマ : 児童書
ジャンル : 本・雑誌

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