FC2ブログ

『霧のとばり』ローズ・コナーズ 二見文庫

2010-02-03

Tag :

☆☆☆

風光明媚な海岸線と霧の町チャタム。ケープコッドの小さなこの町で、1年前のメモリアル・デーの朝、胸をローマ数字の1の形に切り裂かれた惨殺死体が見つかった。いま“わたし”検事補のマーティは事件の陪審評決を待っている。被告は山ほどの前科を持つ男ロドリゲス。だが有罪評決の直後、新たな死体が発見される。胸にはローマ数字の2 ― 模倣犯か冤罪か?マーティは対立する弁護士ハリーと真実を追い始めるが……メアリ・H・クラーク賞受賞の珠玉のミステリー 内容紹介より



有名な避暑地を舞台にしたリーガル・サスペンスとシリアルキラーものをあわせた作品です。本書において非常に印象に残ったのは、殺人罪に問われた被告人へ被害者の母親が行った被害者意見陳述の箇所です。生きていればたどったであろう被害者の将来の道や彼の人柄、家族愛や恋愛について述べるのですが、こういう場面をわたしはリーガル・サスペンス作品においてこれまで読んだ覚えがありません。どちらかと言えば、従来のリーガル・サスペンスは、法廷において有罪か無罪かを虎視眈々と狙いながら行うゲーム感覚みたいなものが多く、そこには被害者の家族、友人、親しくしていた者の悲しみや喪失感といった感情が、エンターテインメント性の下に、ないがしろにされてきた傾向があるような気がします。また、別の被害者の告別式では、親友が行う弔辞の形をとって約6ページ * に渡り生前をしのぶ場面が描かれています。この残された者への視線は、検察官、弁護士として長年活動してきた著者の経験から出たものでしょう。
340ページの短めの作品にしっかりまとめてありますが、違和感を覚えたのは、(ネタばれ→)「ジキル博士とハイド氏みたいな犯人像です。普段は好人物の犯人が、PTSDらしきことにより軍隊を想起させるものを解発因として犯行を行う。ここまではいいのですが、その犯行を他人の罪に着せる行動をとることがどうも納得いきません。こういう精神状態にある人物は殺したら殺しっぱなし、犯行後、冷静になってから他人に罪を被せるような奸計を巡らすものなのかなあ、なんて。

*ただ、先の母親が行った被害者意見陳述とこの弔辞への作者の趣旨がだぶっているし、センチメンタルに傾き過ぎてしまった感があります。




霧のとばり (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)霧のとばり (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)
(2004/12)
ローズ コナーズ

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

カテゴリー

最近の記事

月別アーカイブ

02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07 

ユーザータグ

短編集 ホラー SF アンソロジー クリスマス・ストーリー ルース・レンデル アーロン・エルキンズ スティーヴン・キング キャロリン・G・ハート デイヴィッド・ハンドラー ドン・ウィンズロウ ジョアン・フルーク ローラ・チャイルズ マイクル・クライトン ジョー・R・ランズデール ジョージ・P・ペレケーノス C・J・ボックス ポーラ・ゴズリング ヘニング・マンケル レジナルド・ヒル ローレンス・ブロック カール・ハイアセン パーネル・ホール ジェイムズ・パタースン S・J・ローザン ジェームズ・パターソン エド・マクベイン リチャード・マシスン ジル・チャーチル D・M・ディヴァイン リリアン・J・ブラウン ジェフリー・ディーヴァー レスリー・メイヤー ピーター・ラヴゼイ ジャネット・イヴァノヴィッチ スチュアート・ウッズ ローラ・リップマン ジョルジュ・シムノン レックス・スタウト ジョー・ゴアズ ウィリアム・カッツ マーガレット・ミラー クレオ・コイル ジャック・カーリイ アリス・キンバリー マーシャ・マラー アイザック・アシモフ カーター・ディクスン ヒラリー・ウォー ジョン・ディクスン・カー コリン・ホルト・ソーヤー ルイーズ・ペニー エド・ゴーマン マイケル・ボンド ジェフ・アボット G・M・フォード ジェームズ・ヤッフェ イーヴリン・スミス フレッド・ヴァルガス ロブ・ライアン リタ・メイ・ブラウン ポール・ドハティー キャロリン・キーン ウィリアム・L・デアンドリア ダナ・レオン リン・S・ハイタワー アン・クリーヴス アンソニー・ホロヴィッツ デイヴィッド・マレル ドナ・アンドリューズ サイモン・カーニック ジョアン・ハリス ジャン=クリストフ・グランジェ スタンリイ・エリン ジョン・クリード アンドレア・カミッレーリ レニー・エアース ケイト・ロス ウイリアム・P・マッギヴァーン レイ・ハリスン コニス・リトル クリスチアナ・ブランド エヴァン・マーシャル ファーン・マイケルズ オーサ・ラーソン ジャック・フィニイ ウィリアム・ランデイ エーリヒ・ケストナー リック・ボイヤー ビリー・レッツ サキ ユージン・イジー イーサン・ブラック ジェーン・ラングトン ウォルター・サタスウェイト ウォルター・モズリイ トバイアス・ウルフ ポール・ドハティ スタンリー・エリン 

ブログ内検索

全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

リンク

RSSフィード

最近のトラックバック

最近のコメント