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『ドラマ・シティ』ジョージ・P・ペレケーノス ハヤカワ文庫

2010-07-16

☆☆☆☆

別れの時は近づいていた ― 罪を犯し、服役していたロレンゾは、出所後、動物虐待監視官の職に就く。そこで安楽死直前の犬、ジャスミンに出会った。人間のような愛らしい表情をみせるこの犬に触れ、ロレンゾも人間らしさを取り戻していく。が、彼を親身に世話してくれた仮釈放監察官がギャングに撃たれ、事態は急変する。怒りに駆られたロレンゾは復讐を誓う ― 男は犬を救い、犬は男を救った。しかし待っていたのは…… 内容紹介より



何度もいいますが、ペレケーノスという作家は、オーソドックスな作法でありながらも男同士の友情や絆を描くのが非常に巧いです。今回も主人公のロレンゾとナイジェル、メルヴィンとリコの繋がりが過度過ぎず、しかし充分に描き出されていると思います。ここに物足りなさを感じる読者もいるかも知れませんけど、従来よりいい具合にくどさが抜けている感じがしました。この二つの繋がりのなかで特に注意を引く人物がリコという若いギャングで、彼を殺しを好むただの冷血漢にしていないところに作者の心配りを感じました。異常な性格の原因として子供時代の環境を背景描写し、さらにメルヴィルを父親のように慕う感情を描き、異常な悪人ながら切り捨てることはしていません。ここにペレケーノスの作品に一貫して流れる、いわゆる誰も悪人として生まれてくる人間はいない、犯罪の芽は子供時代の家庭、社会環境にあるという主張が見られます。本書においても“父親の不在”が目に付きました。センチメンタルあるいは単純な理想主義的言説と捉えられるにしても、無骨に言い続ける姿勢には共感できるものがあります。
男の描き方に比べて女性についてはいまひとつの感があったペレケーノスですが、仮釈放監察官レイチェルについては人物像の表裏が興味深く設定されていました。彼女が通う中毒者自主治療会の活動内容や動物虐待監視官という主人公の職業自体も物珍しく印象に残りました。

タグ:ジョージ・P・ペレケーノス




ドラマ・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫)ドラマ・シティ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2006/08)
ジョージ・P・ペレケーノス

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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