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『首切り』ミシェル・クレスピ ハヤカワ文庫
2011-05-29
- Category : ☆☆☆
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一流の経営コンサルタントだった私は、突如解雇され失業者へと転落した。が、人生は苦もあれば楽もある。突然好機は訪れた。ある企業がリストラされた優秀な人材の就職先を斡旋してくれるというのだ。私たちは孤島に集められ、すぐに奇妙な就職試験を受けることになった。陰惨な結果が待つとも知らず……。紳士淑女を野獣へ変える血の再就職サバイバルへようこそ。フランス推理小説大賞に輝く、苦みの効いたサスペンス。 内容紹介より
登録されたら一流企業への就職を斡旋してくれる人材登録会社の試験を受けるべく、孤島に集められた主人公を含む選抜された15人の失業者たち。三チームに分けられた彼らは会社運営のシミュレーション試験に臨むことになり、個人やグループ同士の闘争心にいっそう拍車がかかり、やがて暴走し始めるというストーリーです。頭脳戦だった前半から中盤にかけてのやりとりは、やや長めな感じがしましたが、それでもかなり興味深く面白かったです。しかし、終盤になり暴力場面になるとありきたりの展開で意外性に欠けてた印象を受けました。極端に言えば、緊迫感を出すためと物語を身軽にするために、失業者はメインの三人でも良かったのではないでしょうか。職を得るために、欺瞞や暴力を用いてライバルを蹴落とすという設定はたまに見ますけれど、本書のように次第に追いつめられて心がおかしくなってしまう様子を描いた作品は比較的珍しいかもしれません。ただ、その過程にメリハリが効いていないのといきなり暴力に至った直接的な理由が説明(あるいは誇張)不足気味のような気もしました。
とにかく、フランスミステリには毛色の変わった作品が多いものですが、これもミステリとリストラ、再就職を組み合わせて、違った角度から捉えたユニークな作品だと思います。
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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌
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