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『ニューヨークの錠前屋、街を行く』 ジョエル・コストマン グリーンアロー出版社

2011-07-22

Tag : 短編集

☆☆☆☆

錠前屋の仕事をしながら、この仕事で知った人たちのことを書こうと思ったとき、すでに三本の長編を書きあげていた。いずれも未刊であるが、錠前屋の仕事をしながら出会った人たちのことを書こうと決心した。友人たちもそれをすすめた。コストマンの狙いは「リアル・ニューヨーカー」の肖像画を描くことだった。有名ではない、となりに住む人たちである。彼らの危機(苦しみや哀しみや悩み)をとらえて、それを書きたかった。こうして、「ニューヨークの錠前屋、街を行く」におさめられた14の短編はコストマンの20年の経験から生まれた。(訳者あとがきより)



「かたい表面」「形見」「ターザン、仲間を見つける」「ミスター・パシフィコの新生活」「新品同様」「ひび割れ」「愛のチャペル」「ディスカウントの意味」「チキン、ロブスター、ビュイック」「もの忘れについて知っておきたいこと」「話のたね」「裸の街」「相場」「本当の友だち」収録。

いかにも常盤新平氏が好みそうな、雑誌ニューヨーカーに掲載されていそうな、ボブ・グリーンみたいな、ミニマリズムの影響を受けてそうな作品です。ただ、ニューヨーカー誌に載っている短編にたまに見られるスノッブさはなく、ボブ・グリーンのコラムで感じるセンチメンタリズムな傾向もありません。
精神に変調をきたした兄をもった作者自身の体験があるからなのか、「かたい表面」や「ひび割れ」のように精神を病んだ人物が登場する話、偶然再会した、恋人に去られたばかりのゲイの担任教師の話「 ミスター・パシフィコの新生活 」、ナチスの強制収容所にいた過去をもつ老婦人とその夫の話「本当の友達」、出戻り息子と父親の「ディスカウントの意味」、これらの作品は心に何かを負っている人々を描いています。人生の小さなつまずきを描いた「新品同様」と「相場」。また、錠前屋だからこそ体験できたエピソードである「ターザン、仲間を見つける」や「話のたね」。「チキン、ロブスター、ビュイック」、「裸の街」は、仕事先で出会った不思議でユニークな人たちが印象的であり、「形見」や「もの忘れについて知っておきたいこと」は、時の流れを感じさせて哀愁をおびています。微笑ましいのは、ベタな設定ながら、ミュージシャンと子供たちと音楽の情景が浮かび上がる「愛のチャペル」。




ニューヨークの錠前屋、街を行くニューヨークの錠前屋、街を行く
(1999/06)
Joel Kostman、 他

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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