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『我らが父たちの偽り』 アンドリュー・テイラー サンケイ文庫

2011-11-10

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☆☆☆☆

突然の父の“自殺”にシーリアは疑問を抱いた。自殺しようとする人間が車一台分もの古本を買いこむだろうか?通を自認した父が安物のジンを“最後の酒”に選ぶだろうか?歴史家の父は過去の事件の真相を突きとめ、その公表を恐れた何者かが父を殺したのだ。シーリアと父の旧友ドゥーガル少佐、その息子ウィリアム・ドゥーガルの三人は素人探偵に乗り出した。父が知った事実とは?そして謎の殺人者の正体は?新鋭の86年度ゴールド・ダガー賞候補作。 内容紹介より



どこかで聞いた名前だと思っていたら、買ったまま一向に読んでいない、タイトルに天使が付いているあの三部作の作者ではないか。こんな作風の人とは知らなかった。また、北沢和彦氏の訳者あとがきによると、本書も“ウィリアム・ドゥーガル”を主人公にしたシリーズ”の一冊だそうです。
短く区切ってある各章(あるいは各パラグラフ)の終わりの文章が毎回とても効果的に仕込まれ手慣れています。つまり、誰かの発言や出来事など、なんらかの一石を投じた後、それを受けて次章に続いたり、場面転換したりする構成がかなり巧みに組み立てられている印象を受けました。
たとえば、父親の旧友である少佐が自殺説に納得している発言をしたことに対して、シーリアが答えて言う場面、「「ジンのことはどうなんですか?」「どういうこことかね?」「海辺にあった壜は、スーパーマーケットの自社銘柄のものです。でも、ジンに関して、父は通を気どってました。最後の瞬間にアルコールの慰めがほしかったとすれば、ゴードン以外のもので我慢すると思います?」」(p35)。この発言で章が終わり、次章は別の場面で始まります。
一方、少佐が亡くなった友人の書斎に入った場面では、「部屋は、少佐が最後に見たときとほとんど変わりなかった。変わっているのは、引き裂かれた紙とボール紙の山が、なにかの生贄のように電気ストーブの前に積み上げてあるぐらいだった。彼はしゃがんでその山を突いてみた。 リチャードのいちばん新しい本が三冊、何者かの手で故意に引き裂かれていた。」、この場面で章が終わり、次章は、「少佐をいちばん驚かせたのは、その行為の残忍さだった。本のカバーは重ねて踏みにじられ、大半のページは四つに引き裂かれていた。本を壊すのは容易なことではない。ここまでやるにはそうとうの根気と決意を要したはずだ。」(p185~186)、と同じ場面で始まっています。この箇所は同じ章にまとめてもよい流れですが、いったん区切って終わらせることで、読者を驚かせ強く印象付ける効果を狙ったのでしょう。こういう工夫がしてあって、緊張感が保たれ、ダレることなく非常に読みやすい作品でした。




我らが父たちの偽り (サンケイ文庫―海外ノベルス・シリーズ)我らが父たちの偽り (サンケイ文庫―海外ノベルス・シリーズ)
(1987/02)
アンドリュー テイラー

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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