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『九人と死で十人だ』 カーター・ディクスン 国書刊行会

2011-11-14

☆☆☆☆

第二次大戦中、ドイツ潜水艦の襲撃に脅えながらイギリスへ向かう商船エドワーディック号の船室で、出航以来、いわくありげな雰囲気をふりまいていた乗客の女性が喉を切り裂かれて殺されているのが発見された。現場に残されていた血染めの指紋は、調査の結果、船内の誰のものでもないことが判明する。乗客は全部で九人。はたして姿を見せない十番目の人物が存在するのか?この雲をつかむような不可思議な事件に、名探偵サー・ヘンリー・メリヴェールが見出した驚くべき真相とは?〈不可能犯罪の巨匠〉カーター・ディクスンが、戦時下のイギリスで書きあげたスリリングな傑作本格ミステリ。 内容紹介より



以下、ネタバレ気味です!ご注意下さい。

航海中の船内という隔絶された場所、限られた少数の登場人物、高名な探偵とその助手役、そしてどう考えてもレッドへリングにしかとれない残された指紋、これらのいかにも本格推理小説らしい要素に加えて、戦時中の灯火管制下による闇夜、敵方のスパイが乗船している疑い、防毒マスクを被った怪しい人物、これらが一層サスペンス性を高めています。この作品が、やや設計図通りに人物が動き、物事が起りがちな一般的な本格ものと異なっているところは、犯人の目論みがある原因で当初の意図から外れてしまい、偶発的な状況を作り出してしまう展開になっていることです。たとえば、現場に残された指紋も単なるトリックの一つに過ぎないのでなくて、後に、二重三重の意味が付け加えられていたことがわかります。そういうところがストーリーの流動性を読後に感じさせ感心させられるというわけです。
その一方、人物造形については相変わらず一時代前の本格ものに出てくるパターン化したもので、賛否はあるもののキャラクター重視、人物像を書き込む傾向にある現代のミステリを読み付けていると、しかたないけれどそこらあたりは平板に感じました。とにかく読んで良かったと思える秀作です。

『時計の中の骸骨』カーター・ディクスン ハヤカワ文庫
『エレヴェーター殺人事件』ジョン・ロード/カーター・ディクスン ハヤカワ・ポケット・ミステリ




九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)九人と死で十人だ 世界探偵小説全集(26)
(1999/12)
カーター・ディクスン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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