FC2ブログ

『救いの死』 ミルワード・ケネディ 国書刊行会

2011-11-24

Tag :

☆☆☆☆

グレイハースト村の名士エイマー氏はある日、他人を寄せつけない謎の隣人モートンが、かつて華麗なアクロバットで名を馳せた映画俳優ボウ・ビーヴァーによく似ていることに気がついた。十数年前、人気絶頂のビーヴァーが突然引退した謎に興味をかきたてられたエイマー氏は、金と暇にあかせて探偵のまねごとを思いつき、独自に調査を始める。過去の記録を探るうちに、やがて女性秘書の襲撃事件や、役者修業時代に関わった殺人事件裁判が浮上し、俳優の秘められた過去が次第に明らかにされていくが……30年代英国ミステリ界きっての異才が盟友アントニイ・バークリーに捧げた問題作。 内容紹介より



なかなかの珍書。でもルース・レンデルだったら、主人公の性格をより嫌な奴に、そして最後にもうひと捻りして意外性のある終わり方にしていたと思います。とにかく一貫して描かれる主人公の独りよがり、鼻持ちならない俗物ぶりが面白いです。そもそも主人公が隣人の正体を調べはじめた動機も、食事に招待してけんもほろろに断られ、地方の名士であり知識人(と思い込んでいる)の自分がないがしろにされたと腹を立てたからという下らないものです。作品が主人公の手記という形式をとって書かれているために、上辺を取り繕いながらも下衆な本性が見え隠れしている様子が読みどころだと思います。巻頭にアントニイ・バークリー宛てに、バークリーらが探偵小説において「殺人にいたるまでの『心の過程』を追求する新たな道」(p6)を見いだしたようだが、「それは『推理(Detection)』から離れていくこと」になるのではないか?という内容の一文を載せています。たしかに本書は著者の思う探偵小説の形であり、推論と実験を行って事実を求める科学のように、主人公が推理を組み立て様々な調査によって真実を立証していくプロセスを描いています。しかしながら、それよりさらに興味を引かれるのは、望遠鏡を購入し隣家が観察できる場所に設置した彼の行為が象徴しているように、彼の心の根底にあり、探偵たらしめている「覗き見」行為へと駆り立てられる彼自身の姿なのでした。




救いの死 (世界探偵小説全集)救いの死 (世界探偵小説全集)
(2000/10)
ミルワード ケネディ

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

てんちゃん1号

  • Author:てんちゃん1号
  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

カテゴリー

最近の記事

月別アーカイブ

11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07  06  05  04  03  02  01  12  11  10  09  08  07 

ユーザータグ

短編集 ホラー SF アンソロジー クリスマス・ストーリー ルース・レンデル アーロン・エルキンズ スティーヴン・キング キャロリン・G・ハート デイヴィッド・ハンドラー ドン・ウィンズロウ ジョアン・フルーク ローラ・チャイルズ C・J・ボックス ジョージ・P・ペレケーノス マイクル・クライトン ジョー・R・ランズデール ヘニング・マンケル ポーラ・ゴズリング レジナルド・ヒル エド・マクベイン ジル・チャーチル ジェイムズ・パタースン ローレンス・ブロック ジェームズ・パターソン リチャード・マシスン S・J・ローザン カール・ハイアセン ジャネット・イヴァノヴィッチ リリアン・J・ブラウン D・M・ディヴァイン スチュアート・ウッズ パーネル・ホール ピーター・ラヴゼイ ジェフリー・ディーヴァー ローラ・リップマン アリス・キンバリー ジョルジュ・シムノン レックス・スタウト ジョー・ゴアズ ウィリアム・カッツ マーガレット・ミラー レスリー・メイヤー ジャック・カーリイ クレオ・コイル ヒラリー・ウォー アイザック・アシモフ カーター・ディクスン ジョン・ディクスン・カー マーシャ・マラー エド・ゴーマン コリン・ホルト・ソーヤー ルイーズ・ペニー マイケル・ボンド ジェフ・アボット イーヴリン・スミス ジェームズ・ヤッフェ フレッド・ヴァルガス ウィリアム・L・デアンドリア ロブ・ライアン リタ・メイ・ブラウン キャロリン・キーン G・M・フォード ポール・ドハティー ジャン=クリストフ・グランジェ リン・S・ハイタワー ダナ・レオン ドナ・アンドリューズ ウイリアム・P・マッギヴァーン サイモン・カーニック スタンリイ・エリン クリスチアナ・ブランド アン・クリーヴス アンソニー・ホロヴィッツ ジョアン・ハリス ケイト・ロス アンドレア・カミッレーリ ジョン・クリード レニー・エアース デイヴィッド・マレル コニス・リトル オーサ・ラーソン ファーン・マイケルズ レイ・ハリスン エヴァン・マーシャル ウィリアム・ランデイ ジャック・フィニイ ウォルター・モズリイ ビリー・レッツ サキ ジェーン・ラングトン ユージン・イジー イーサン・ブラック リック・ボイヤー エーリヒ・ケストナー ウォルター・サタスウェイト トバイアス・ウルフ ポール・ドハティ スタンリー・エリン 

ブログ内検索

全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

リンク

RSSフィード

最近のトラックバック

最近のコメント