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『裏切りの街』 ポール・ケイン 河出文庫

2012-01-14

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☆☆☆☆

ロサンジェルスにやってきた、流れ者のジェリー・ケルズは、ある組織のボスに呼ばれ、賭博船の用心棒になってくれと頼まれる……。“不況と混乱の時代”、“ギャング・エイジ”と呼ばれる30年代のロサンジェルスで、政界とつながる組織の陰謀にまきこまれる主人公は、したたかにハードに、反撃にでる。チャンドラーが“超ハードボイルド”と評し、ビル・プロンジーニやジョー・ゴアズも“『裏切りの街』はまさにハードボイルドだ”と絶賛した極めつきの名作。ポール・ケイン唯一の長篇。 内容紹介より



たしかにハードボイルドの硬度がものすごく高かったです。東部から訳ありでロサンジェルスに流れてきた一匹狼の主人公が、地元の裏の権力者たちの勢力争いに巻き込まれてしまう話であり、なにかハメットの『赤い収穫』を思い浮かべそうな設定です。本書の場合、主人公にたいして権力者たちから手を組むように誘いがきますが、それを断ると主人公が敵方に付くのを危ぶみ、一転して彼を陥れようとします。そして一人の有力者のスキャンダルのネタをめぐって殺し合いが始まります。
作品のイメージが硬質なのは文章にも特徴があって、作者は、登場人物が会話の中で用いる以外に「彼」「彼女」という単語(三人称代名詞)を使っていないことです。例えば物語冒頭で主人公ケルズが登場する場面では、「ケルズは小さな部屋にはいった。部屋はすりガラスを張った壁で仕切られていた。ケルズは壁際の使い古した長椅子に腰をおろすと」(p5)みたいに登場人物たちは必ず名前で表記され、短いセンテンスを使用し、傍白や心理描写は極端に省かれています。このことは作者が脚本家だった経歴と絡めて、村田勝彦氏も訳者あとがきで触れています(p257~258)。
主人公が三回も殴られて、その度に気絶したり、いざとなると脇役に窮地を救ってもらうことのほうが多かったりして、ちょっと違うんじゃないかと思う場面もありましたが、昨今の饒舌系で軟弱なハードボイルド系の主人公およびその作者たちに読ませたい異色作だと思います。




裏切りの街 (河出文庫)裏切りの街 (河出文庫)
(1989/03)
ポール・ケイン

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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