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『死霊たちの宴 下』 J・スキップ&C・スペクター 編 創元推理文庫

2012-01-30

Tag : ホラー 短編集

☆☆☆

生ける死者、生者の肉を喰らう亡者の群れ。それがソンビ ― 「そこで別の死体と鉢合わせした。……相手をふと見やった。そして出会ったのが、彼女だった」死してなお、究極の愛を求める男と女。その姿が鮮烈なマキャモンの逸品「わたしを食べて」をはじめ、下巻には全七編を収録した。生と死のあわいを極彩色に映しだし、恐怖と哄笑、生と汚辱のはざまをたゆたう待望の傑作集! 下巻内容紹介より



「レス・ザン・ゾンビ」ダグラス・E・ウィンター
尾之上浩司氏の解説によると本作は、ブレット・イーストン・エリス『レス・ザン・ゼロ』のパロディだそうで、『レス・ザン・ゼロ』というと80年代に咲いたあだ花みたいな作品ですが、刹那的退廃的な雰囲気をうまくゾンビ話に移し替えているように思いました。ドラッグやセックスとか一時的な快楽を求める若者たちの姿はゾンビとあんまり変わんない、っていうことなのでしょうか。

「パヴロフの犬のように」スティーヴン・R・ボイエット
昔、アリゾナ砂漠にバイオスフィアの実験施設が建てられ、外界と遮断された人工生態系の中で科学者たちは暮らしていけるのかという研究が行われましたけれど、本作はそのアイデアにゾンビを絡ませたものです。壮大な科学実験の理念にくらべて、エコスフィアと呼ばれる施設内での研究者たちの自分本位で身勝手な考えや行動が描かれ、それに怒った外界の人物がカーニトロープ(ゾンビ)を使って破壊活動を仕掛けるというもの。

「がっちり食べまショー」ブライアン・ホッジ
ゾンビに支配された世界で、彼らの娯楽を満たすためのバラエティ番組『がっちり食べまショー』の司会を務めることで生かされ名声を博している男の話。視聴率重視の軽薄な番組と制作するTV業界、彼らが作る番組を観て喜ぶ視聴者たち。こういう傾向をパロディにしているのでしょうか。そうだとしたら、あまりひねりがないです。

「キャデラック砂漠の奥地にて、死者たちと戯るの記」ジョー・R・ランズデール
科学者時代に死者をゾンビ化する細菌を世界にまき散らす事故を起こした宗教家と彼に拉致された賞金稼ぎとお尋ね者の話。ランズデールらしく下品な言葉や表現が満載で、そういうところはパンチが効いていますが、内容自体は特別に斬新なものではないと思います。

「サクソフォン」ニコラス・ロイル
東西両勢力が戦い合うユーゴスラヴィア、そこに臓器売買のための人間を求めて参入するゾンビグループ。元サクソフォン奏者のゾンビがもう一度楽器を奏でるためにある女を呼び寄せようと計画し、その資金を得ようとグループに参加するという話。音楽への強い欲求がなによりも他を圧倒している状態にある死者というのがミソなのかどうか、やや説明不足か、よく分かりません。

「聖ジェリー教団VSウォームボーイ」デイヴィッド・J・ショウ
要塞化した屋敷に侵入してくるゾンビを捕食にしている男とゾンビの集団を率いる宗教者の男との戦い。
肉片骨片体液のシャワーが浴びれる、〈スプラッタパンク〉そのものともいえるエグくてグロい作品。ゾンビを喰らう人間が登場する話はこの作品以外に読んだことがないです。

「わたしを食べて」ロバート・R・マキャモン
ゾンビの男女の恋愛を描き、それを成就、昇華せしめた、このジャンルの傑作。こういう世界にロマンチックな要素を持ちこんでさまになるのはこの作者くらいかも。

『死霊たちの宴 上』




死霊たちの宴〈下〉 (創元推理文庫)死霊たちの宴〈下〉 (創元推理文庫)
(1998/08)
ロバート・R. マキャモン、スティーヴン・R. ボイエット 他

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

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