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『ベルリン・ノワール』 テア・ドルンほか 扶桑社

2012-09-20

☆☆☆

ベルリンの闇を描く5偏の犯罪小説
長い歴史を持つ都市ベルリンは、1920年代に繁栄をきわめながらも、第二次世界大戦による徹底的な破壊と、冷戦による東西分断という、例のない苦難に見舞われた。そして、あの劇的な壁の崩壊から10年、いままたベルリンは、統一ドイツの新たな首都として生まれ変わろうとしている。だが、さまざまな人間が交錯する多元都市ベルリンには、もうひとつ、知られざる裏の顔が隠されているのだ……。本書は、ドイツ・ミステリー界注目の作家5人が競作した、野心的な犯罪小説集である。東西統一のひずみや貧富の格差、人種や移民問題など、現代ベルリンの真実を見据え、闇に渦巻く人間模様と犯罪の諸相を鋭くえぐり出す、本邦初のドイツ暗黒小説アンソロジー! 内容紹介より



テア・ドルンとハイナー・ラウ以外の三人は東側の出身だそうです。どの作品にも「Sバーン」と呼ばれる都市圏を走る鉄道やベルリン市内の駅名が登場しています。

「犬を連れたヴィーナス」テア・ドルン
SMパーティーの会場で鞭打たれていた犬を救い出し、自宅で飼っていた主人公は、散歩に連れ出したある日、カフェで目を離した隙に犬を見失しなってしまう。犬を探し求めるうちに、彼女は元の飼い主だと思われる毛皮を着た老婦人の元にたどり着くのだが……。
題名と毛皮という単語から、当然マゾッホの作品が頭に浮かぶわけで、つまりは犬は調教されたマゾヒストの置き換えであり、彼は新しい飼い主である主人公から受けた安逸な暮らしよりも元の刺激的な生活を選んだということなのでしょう。たぶん。

「ガードマンと娘」フランク・ゴイケ
駅の構内を巡回する中年の警備員がそこに住み込んだホームレスの娘と関係を持ったことをネタに、娘やその恋人に強請られるはめになり、それを清算するため殺人計画を立てるという話。
収録されている作品のなかで一番スタンダードな倒叙ミステリ型のクライムノベルでした。とても分かりやすいのは良いけれど、ラストには何らかのサプライズが欲しかったところです。

「廃墟のヘレン」ハイナー・ラウ
若くして裕福になった男が、かつて大学で教えを受けた哲学科の非常勤講師と電車に乗り合わせる。彼は男が学生時代に好意を寄せていた女性のあこがれの人物だった。しかし、今はすっかり落ちぶれた格好をしていた。実は、講師はその女性と付き合っていたのだが、彼女が早世したためにすっかり気落ちし学問の世界を離れ、夜間警備員として暮らしていたのだ。そして、二人の男たちが亡くなった女性そっくりの娼婦に偶然出会った時、彼らの運命が交わり悲劇を迎える、という話。

「ブランコ」ベアベル・バルケ
これまでずっと人種的な偏見や差別を受けてきた浮浪者ブランコ。彼がある家の婦人から着せられた社会主義人民警察の制服と拳銃を身に付けたまま電車に乗り込むと、乗客の酔っ払った少年グループに挑発され、また、彼らが一人の夫人をからかい始めたことが起爆剤となってブランコの中にあったものが弾け飛んでしまう。見せ掛けながらも、かつてブランコが手にしたことがなかった制服に象徴される権力、拳銃という力と鬱積した怒りや不満とが酒を触媒として融合し反応した結果、彼がとった暴走を描いた作品、だと思います。

「狂熱」カール・ヴィレ
大学図書館の学生補助員の女性、駅の夜間警備員の中年男性、反体制運動を続ける若者。おそらく三角関係にある、この三人の男女の話がそれぞれの視点から描かれているわけですが、なにやら夢うつつみたいな内容で、何が言いたいのかよく理解できませんでした。進歩的、保守的、急進的、三人三様の考え方と彼らの心に潜む「狂熱」がキーワードになっているのでしょうか。




ベルリン・ノワールベルリン・ノワール
(2000/03)
テア・ドルン、ハイナー・ラウ 他

商品詳細を見る

テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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