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『東京へ飛ばない夜』 ラーナ・ダスグプタ ランダムハウス講談社

2012-09-29

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☆☆☆☆

ジャンボ機は東京へ向かっていた。ところが急な悪天候により、航空機はとある国に臨時着陸した。行き場の見つけられなかった乗客十三人は、空港で一夜を明かすことに。閑散とした空港の片隅で、男女十三名は身を寄せあい、退屈しのぎに「夜話の会」を開くことになった ― それが、奇妙な世界への入り口だとも知らずに。

だれかの声が上がった。「あたしがひとつ、お話を知っているわ」そうそう、その調子でいいんです。気楽にいきましょう。

「怖くなんかないわ。所詮、お話よ。作り事の世界でしょう」
「そうさ、たしかにそうかもしれない。いま話した物語も、君の存在するこの世の中も……」 内容紹介より



仕立屋、過去をつむぐ男、富豪の眠れない夜、地図屋の館、店、高架下の少年、ちょっとしたこと、東京ドール、イスタンブールの逢瀬、チェンジリング、地下室の取引、幸運な耳掃除屋、こんな夢をみた、以上の十三話。

イギリス出身の作家ですが、現在インドのデリー在住であることや名前から推測するとインド系の人なのでしょうか?
深夜の空港に残された13人の乗客たちが、それぞれ物語を話し聞かせるという設定での13話が収録されています。マジックリアリズムというかポストモダンというか、そういう色合いが強く、ほとんどの話が幻想性の高いもので、それゆえになかなか理解し難い、意味不明な要素を備え、また、そういう傾向に幻惑されて何か実際の質より高評価を付けてしまいがちになりそうな気がしました。
たとえば、第八話「東京ドール」は、日本人のロボットに対する妙な嗜好、他国と比べての偏愛ぶりを描いているだけであり、結末の曖昧さがマイナスに目立つ平凡な話ですし、第九話の「イスタンブールの逢瀬」にいたっては、イスタンブールでウクライナ出身の女商人とバングラディシュ人の船乗りが出会い、一年後に再会の約束をするという話なのですが、これは船乗りの喉から鳥が這い出てくる突飛で意味不明な部分を除いたらただの月並みな話としか思えません。
一方、第十三話の「こんな夢をみた」は、元ビデオショップの店主が、彼が営む困窮者向けの宿泊施設において、料金を無料にする代わりに宿泊客13人の見た夢を記録し、それを再生してみるとすべての夢に店主自身が登場している、という夢を見た話です。その夢は、そこからさらに13の夢をつなぎ合わせた、彼を主人公にした摩訶不思議な物語になっていきます。そこにはこれまでに語られた12話の断片も散りばめるという、メタフィクションの手法をとった話なのですが、これはなかなか魅力的で、その世界に引き込まれてしまう作品でした。                               
このように意表を付いたような、意外性を狙っているような話もあれば、書きかけのような、習作のような印象を受ける話、豊かな想像力を感じさせる話もあって、作者の技量のレベルとともに、いろいろと判断に迷いますが、作者が創り出す独特な世界や西洋と東洋を融合した個性的な作風は貴重なものだと思います。




東京へ飛ばない夜東京へ飛ばない夜(ランダムハウス講談社)
(2009/03/12)
ラーナ・ダスグプタ

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テーマ : 読んだ本。
ジャンル : 本・雑誌

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