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『ベツレヘムの密告者』 マット・ベイノン・リース ランダムハウス講談社

2012-10-05

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☆☆☆

国連学校の歴史教師オマー・ユセフは、ジョージ・サバがイスラエルの内通者と名指しされ、テロリスト射殺幇助の容疑で逮捕されたと知らされて耳を疑った。教え子のなかでもとびぬけて優秀で誠実なサバが内通者とは?動かない警察に業を煮やしたオマー・ユセフは、周囲の制止を振り切り、銃煙漂う街を徒手空拳で事件の真相を追い始めたが……。パレスチナの庶民の視点で描いた異色の本格ミステリ。CWA新人賞受賞作 内容紹介より



これまで一般的な設定のパレスチナ対イスラエルという対立構造から一歩踏み込み、パレスチナ社会に内在する問題をテーマにして、その社会を別な側面から捉えて見せる作品であるためかなり新鮮に感じました。しかし、そのために娯楽小説としては気が滅入る後味の悪い作品でもあります。イスラエルへの聖戦という錦の御旗を掲げる武装組織がベツレヘムの司法、行政、経済へ強い影響力を示すなか、一人のキリスト教徒の一般市民が彼らに歯向かったために、彼はイスラエルの内通者との濡れ衣を着せられて逮捕されてしまいます。かつての教え子の無実を確信する主人公の教師が、彼が関わったという殺人事件の調査を始めるというもの。
主人公はこれまで生徒たちに理想を説いてきた学校という安全地帯を離れて、腐敗や暴力、偏見や狂信がはびこる現実の世界で挫折や無力感を味わい、また身の危険に晒されたりします。しかし、彼のキャラクターは常に聖人然としているわけではなく、妻以外の女性に妄想を抱いたり、校長に反発して皮肉を吐いたりする人間臭い一面も描かれています。 
「本書における犯罪はすべてベツレヘムで実際に起きた出来事に基づいている」と、タイム誌のエルサレム支局長を務めた経歴がある著者がまえがきに記しているように、本書の内容は非常にリアリティの高いものなのでしょう。できれば作中の米国人校長を英国人校長に置き換え、そもそもの紛争の種を蒔いた当事者である英国人の考えを聞かせて欲しかったように思いました。




ベツレヘムの密告者 (ランダムハウス講談社 リ 5-1) (ランダムハウス講談社文庫)ベツレヘムの密告者 (ランダムハウス講談社 リ 5-1) (ランダムハウス講談社文庫)
(2009/06/10)
マット・ベイノン・リース

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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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