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『ゴースト・モーテル』 クライヴ・バーカー 集英社文庫

2012-10-19

Tag : ホラー 短編集

☆☆☆☆

《アラベスクとグロテスク》
これまでのホラー小説には珍しく生々しい血やセックス、殺人の氾濫といったグロテスクさとは別に、目を見張ったのはその多様性である。まさにアラベスクの入り組んだ世界が、作品の中に縦横に展開する。作品に好悪はあっても出来不出来がなく、かなりの質を保ちながら、これだけのバラエティに富んだ内容を書き分けられるのは並み大抵の才能ではない。大変な新人が出てきたものである。解説・仁賀克雄 内容紹介より



血と本[Ⅳ]

「非人間の条件」
不良たちから暴行を受けている老浮浪者の持ち物から、不良のひとりが盗みとった三つの結び目がある紐。その解き解くのが非常に難しい結び目を解くと、そこから得体のしれないものが現れて不良たちに襲いかかるという話。いわゆる封印物が派生した作品なのでしょうが、この得体のしれないものが浮浪者の味方ではないという点、どういう経緯で浮浪者がその紐を持つことになったのかが説明されず、唐突に出現した禁書についてなど、話が整理されていない印象を受けて、中、長編作の不完全なエピソードの一つを読んだみたいな感じになりました。

「手」
ゴーゴリの「鼻」が思い浮かんできそうな話。
ひとりの平凡な男の両手が持ち主に反抗し、右手によって切り離された左手が他の人間たちの手を扇動して反乱を起こすというストレートな内容で、人間の意志に逆らって手を切断する場面のグロさや、カニかクモみたいに手が這い回る場面のブラックな笑いが持ち味の作品。とぼけた設定ですが、結構怖い。

「ゴースト・モーテル」
地縛霊が宿泊客に襲いかかってくる血まみれのスプラッタかと思っていたら、夫婦間に鬱積していた不満が爆発して殺人が起きてしまう話。昔、妻が浮気性の夫を撃ち殺した事件が起きたモーテルの一室。その部屋に宿泊した伝道師の妻には、事件で殺された夫と死刑になった妻の亡霊を見る能力が……。女のことしか頭にない男とその妻の境遇が、一人よがりで高圧的な夫と虐げられる我が身が重なり合うという、幽霊が登場するにもかかわらず妙に人間臭さを感じる話でした。

「悪魔よ、来たれ!」
神の加護を得ようと、悪魔を呼び寄せるために人工の地獄を作った男の顛末。たぶん、ミイラ取りがミイラなったみたいな。

「欲望の時代」
ある研究所で偶然できた催淫剤の実験台になった男の話。それを注射されると性欲が尽きることがなく、男女区別なく襲いかかってしまう。とめどない欲望に突き動かされる人間の姿と本能に究極に支配される姿は、傍目には醜悪だけれど当人からすれば快楽にいつまでも浸れるから幸せなのですね。

『セルロイドの息子』クライヴ・バーカー 集英社文庫
『ヘルバウンド・ハート』 クライヴ・バーカー 集英社文庫




ゴースト・モーテル 血の本(4) (血の本) (集英社文庫―血の本)ゴースト・モーテル 血の本(4) (血の本) (集英社文庫―血の本)
(1987/07/20)
クライヴ・バーカー

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テーマ : ホラー小説
ジャンル : 本・雑誌

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