『アガサ・レーズンと猫泥棒』M・C・ビートン コージーブックス

2017-05-29

Tag :

☆☆

村にやってきた新しい獣医はハンサムな独身男。アガサはさっそく健康そのものの飼い猫ホッジをダシにしていそいそと診療所へ。猫嫌いな様子の獣医を不審に思うも、思いがけずデートに誘われ、細かいことには目をつぶることにした。ところが獣医に約束はすっぽかされるし、飼い猫は行方不明になるしで、不幸続きのアガサ。お詫びに誘われたデートでも、失態を演じて逃げ帰るはめに。そしてその翌朝、なんと獣医が往診中に不運な死を遂げた!事故死ではないと睨んだアガサは、尻込みする隣人ジェームズを従え、さっそく聴き込み調査を開始。すると意外な獣医の「正体」が浮かび上がってきて……!? 内容紹介より



〈英国ちいさな村の謎〉シリーズの第二作目。
主人公アガサと隣人ジェームズが調べていくうちに、獣医は複数の女性に色目を使っていたことが明らかになり、さらに主人公に彼の正体を打ち明けると話していた女性も不審死を遂げていることを発見してしまいます。これも事故死や自殺ではないと考えたアガサはますます事件に首を突っ込む事態に。ジェームズを巻き込むのも、彼が常に自分の傍にいるようにしたいという下心があるからですけれど、恋のライバルの出現や彼の言動に彼女の気持ちはその時々に上がったり下がったり、刻々と移ろい変わる女心が笑えます。そして事件の関係者に嫌がられても強引に話を聴きにいく、たまに悪態をつく、こういう強面な態度が彼女の魅力なのですが、できればさらにその傾向をエスカレートさせて欲しいものです。一方、彼女のウイークポイントは上流階級への引け目だったりして、それが異性に対する一見乙女のような妄想とも言える夢見がちな姿とともにちょっと可愛らしさを感じさせる一面を持っているように感じてしまいます。

『アガサ・レーズンの困った料理』
『アガサ・レーズンの完璧な裏庭』
『アガサ・レーズンと貴族館の死』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『エルサレムから来た悪魔』 アリアナ・フランクリン 創元推理文庫

2017-05-25

Tag :

☆☆☆☆

1171年のイングランド。トマス・ベケット大司教殺害の衝撃もさめやらぬ王国を、ケンブリッジの町で起きた、子どもの連続失踪・殺害事件が揺るがしていた。事件はユダヤ人の犯行だとする声が強く、私刑や排斥運動が起きる。富裕なユダヤ人を国外に追放してしまえば国の財政は破綻し、かばえば教会からの破門は避けられない。進退窮まったヘンリー二世は、シチリア王国から優秀な調査官と医師を招聘し、事件を解決させようとする。若き女医アデリアは、血に飢えた殺人者の正体をあばくことができるのか。CWA最優秀歴史ミステリ賞受賞の傑作。 上巻内容紹介より



修道士カドフェル・シリーズが舞台にしている、女帝モードとスティーブン王が争った無政府時代が終わって、十数年後、ヘンリー二世によるプランタジネット朝が本書の舞台です。そのイングランドで起きた子どもが犠牲となる猟奇的連続殺人事件の捜査につかわされたシチリア王国の敏腕調査官シモン、彼に同行するヒロインのサレルノ医科大学の優秀な女医であり検死医でもあるアデリア、彼女の召使いで偉丈夫な宦官マンスールの三人組が登場します。サレルノでは女医という存在はさほど奇異に見られませんが、イングランドでは魔女扱いされる恐れがあるためにアデリアは身分を隠して活動せざるを得ません。開放的な生まれ故郷とそこで育まれた進取の気性に富み独立心旺盛なヒロインと宗教的な抑圧や頑迷な女性蔑視、そして根深いユダヤ人排斥がはびこるイングランド社会を常に対比させて、それらに臆することのないヒロインの爽やかな姿を鮮明に描き出している印象を受けました。その他の登場人物たちも個性的に描き分けられ、当時の習慣や風俗も面白く読むことができました。ただ、一点引っかかったのは、シチリアから来た三人組の構図が崩れてしまい、それにともなってストーリーのテンポも失速してしまったように感じたところです。非常にバランスのとれた良い三人構成だったし、シリーズ化するうえでも不可欠なチームだと思っていたのですが、これについては作者の意図が図りかねます。



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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『木曜日の子供』テリ—・ホワイト 文春文庫

2017-05-19

Tag :

☆☆☆

木曜日の子供は遠くまで行く—マザーグースはそう歌う。たまたまそんな星の下に生まれたために旅に出なければならない家出少年が、ひとりの殺し屋に出会う。が、この凄腕の殺し屋も、よくよく聞けば両親を航空機事故で失い、たった一人の弟を植物人間にされて敵討ちを心に誓っている。彼もまた“木曜日の子供”なのだろうか? 内容紹介より



殺し屋と刑事という対比した構図をとっていた『殺し屋マックスと向う見ず野郎』、本書では殺し屋と刑事あがりの私立探偵の形をとっています。これは恐らく作者が得意とする形式なのでしょう。そして、あくまで少年にとっては自分を必要としてくれる相手、殺し屋にとっては亡くなった弟の喪失感を埋める存在として互いの愛情を描いてあるのですけれど、深読みしてしまうと殺し屋と家出少年のふたりの関係から漂う危なげな雰囲気が、『真夜中の相棒』を彷彿とさせます。その関係に、家出した子供を捜し出すことを専門とする私立探偵が加わって話が進んでいきます。彼も警官としての挫折と自分の子供が家出して行方が判らない過去を背負っています。作品全体から受ける印象は、パターンにこだわってテーマが通り一遍になってしまっているみたいな感じで、登場人物の行動やその結末も予想したとおりで意外性に乏しく、女性作家に見られる男同士の友情についての美化がやはり目に付き、作者はこれを様式美として極めたいのではないのか、と思ったりもします。その反動によるものなのか女性の登場人物についての印象がペットの犬並みに弱いです。

『殺し屋マックスと向う見ず野郎』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『裏切りの代償』ブレット・バトルズ RHブックスプラス

2017-05-15

Tag :

☆☆☆

ジョナサン・クィンはフリーランスの“掃除屋”。今回始末を頼まれた死体は、コンテナに載せられロサンゼルスまで運ばれてきた。死体の主の名前を聞いてクィンは耳を疑った。スティーヴン・マルコフ—かつて命を救ってくれた元CIAのスパイだった。仕事を終えればすべて忘れる—それがクィンの信条だが、今度ばかりは別だ。クィンは行方不明のマルコフの恋人ジェニーの足跡を追ってシンガポールに飛ぶ!注目のハード・スパイ・アクション第2弾 内容紹介より



シリーズ第一作目の『懸賞首の男』を読んだときは、“掃除屋”という死体を含めたスパイ活動などの痕跡を消し去る職業が目新しくて新鮮に感じたのですが、本書では話のとっかかりでその仕事の有り様が描かれるだけで、その後は従来ある腕利きスパイの真似事みたいな活動に終始し特色をいかしきれていない印象が残りました。物語の展開が二転三転するところは工夫のあとが見られるにしても、オーソドックスなハリウッド映画風なスパイ・アクションです。“影の政府”とかいう強力な陰謀組織を登場させるありきたりな設定、007を思わせるハイテク機器を使うなど、もう少しで荒唐無稽な方向へ流れそうなところで踏み止まっているのと主人公をスーパーヒーロー化させていない点は、これからどうなるか判りませんが維持して欲しいところです。前作でも感じたように主人公の個性が相変わらず弱い、寡黙なのはおおいに結構ですが、プロとしてのこだわりなり流儀をもっと前面に出してもらいたいものです。この主人公だから続編を読みたくなるという具合になれば良いのですけれど。




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『デクスター 夜の観察者』ジェフ・リンジー ヴィレッジブックス

2017-05-11

Tag :

☆☆☆

マイアミ大学の構内で首なし死体が見つかった。被害者の女子学生2人は全身を焼かれ、頭部のかわりに陶器の雄牛の頭が置かれていた。不気味ながら興をそそられる手口……のはずが、事件に関わってからというものデクスターは何者かに執拗にストーキングされ、頼みの“殺人鬼の勘”も今回は捜査に役立ってくれない。そんななか新たな首なし死体が発見され、デクスターの身近な人物にも魔の手が伸びはじめる。手がかりは現場に残された謎の文字。だがそれは想像を超える闇への招待状にすぎなかった!昼は好青年の鑑識官、夜は冷血無情な連続殺人鬼—強烈なダークヒーローの活躍を描く絶賛シリーズ第3弾。 内容紹介より



今回は、ややホラーテイストで主人公デクスターの精神に棲む〈闇の乗客〉と呼んでいる意識体に焦点があてられています。地球が誕生する以前から存在し、動物を宿主とする“それ”の成り立ちが序章として説明され、その傍流が主人公の内部に居る〈闇の乗客〉というわけです。“それ”は、スタージョンの短篇『それ』やクーンツの『ファントム』に登場した怪物を思わせますが、“それ”は物体としては存在せず意識が宿主に乗り移ってあやつるようです。それならどうして主人公を宿主にしなかったのか、疑問に思ったのですけれど、そのあたりの説明は不十分なようで詰めが甘い気がします。それとともに鑑識の仕事そっちのけで巡査部長である義理の妹のお供としてあっちこっち引っぱり回される様子もなんだか違和感がありました。裏の顔である殺人鬼という、これまでの狩る立場から狩られる立場に置かれると作品と主人公の魅力が半減してしまったみたいな印象を受けました。
それから毎回このシリーズの感想で言ってますが、三人称の主人公による会話の部分だけですむ諧謔や饒舌より、本書のような一人称のそれは会話はもとより傍白でもながながと続くためにたちが悪いということ。

『デクスター 幼き者への挽歌』
『デクスター 闇に笑う月』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

『青銅の翳り』リンゼイ・デイヴィス 光文社文庫

2017-05-06

Tag :

☆☆☆☆

—紀元70年のローマ—。内乱を制したウェスパシアヌス帝だが、なお各地に潜伏する謀反の残党がいた。これを探し出し、服従を誓わせるのが、今回、密偵ファルコに与えられた使命である。ペトロ一家との家族旅行を装い、彼が向かったのは、ベスビオ山の大噴火により壊滅するわずか8年前のポンペイ。運命を知りようもない人々は、思い思いに夏の日を楽しんでいた……。—イギリス・ミステリー界で人気No.1のシリーズ第2弾! 内容紹介より



〈密偵ファルコ〉シリーズ。
「小難しい歴史ものではなく、ハリウッド製のコスプレ時代劇」(p545)と、高瀬美恵氏が解説で述べているように、作品の雰囲気は確かに時代劇風であり、内容はハードボイルド調で語られる冒険ロマンス小説に間違いありません。作中で牡牛ネロが引く牛車の歩みのごとく、ストーリーはゆっくりと進み、もう少しスピードアップして欲しいようなまどろっこしさを感じなくもないです。それはたったひとりの男を追跡するだけにページを費やし、しかも何度も取り逃がしてしまうためと、主人公ファルコとヒロインのヘレナとの恋愛沙汰があれこれとああだこうだと描かれ、さらにもう一つの柱となるべきミステリの色合いがかなり薄いためです。舞台をポンペイに選んだことも話題性だけで、作品にこれといった効果はあげていないように感じました。しかし、そういったマイナス面も著者が描き出す真に迫った古代ローマの風景や社会風俗によって十二分に補われているように思います。ファルコとへレナのラブロマンスが大きな部分を占めていて、彼らの今後の行く末が気になって続編を読みたくなる仕掛けが巧妙です。

『密偵ファルコ 白銀の誓い』




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テーマ : 推理小説・ミステリー
ジャンル : 本・雑誌

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  • 海外ミステリなどの感想を誤字脱字、表現・文法間違いを交え、思い込みと偏見を持って書いています。そんな素晴らしいブログなのでリンクとか何でもフリーです。異次元、霊界、他惑星からもお気軽にどうぞ。

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